貴・光泉林開林 90 周年記念と西田多戈止当番様の米寿のお祝い

日本という国号が「倭国」から「日本」に生まれ変わった歴史を証明するの は、国家初の歴史書『日本書紀』です。2020 年に開催される東京オリンピック・ パラリンピックの年に、『日本書紀』は編纂 1300 年を迎えます。この歴史書に、 古代歌謡と呼ばれる歌が 128 首あります。古代日本語アクセント及び中国語原 音声調の研究により、古代歌謡の旋律を復元(音楽的復興)した 3 曲を。また、 龍笛と尺八独奏の 2 曲を、寿ぎの歌として貴・光泉林に奉納させて頂きます。
1、龍笛独奏♪春鶯囀の遊声♪(雅楽の名曲より、お祝いの曲「春鶯囀(し ゅんのうでん)の遊声(ゆうせい)」春の野山にウグイスが囀(さえず) り遊ぶような音色。)
2、日本書紀歌謡より♪スサノオノミコトの歌♪(日本神話におけるスサノ オノミコトは、高天原から地上界に降ろされる。島根県出雲の地で善良 勇敢なヒ-ローに変身して大活躍する。ヤマタノオロチを退治し、クシ ナダヒメと目出度く結ばれる。神殿を建て、その心の歓びを歌う。)
3、日本書紀歌謡より♪厩戸皇子=聖徳太子の歌♪(太子は冠位十二階や憲 法十七条を作成した日本史上最高の知性を持つ。一方、太子は思い遣り 溢れる心優しい方でもあった。旅人に語りかける歌は涙を誘う。)
4、尺八独奏♪月光弄笛♪(月の光が笛の音色をまるで弄んでいるかのよう。) 
5、日本書紀歌謡より♪枯野の琴♪(淡路島に香木の巨樹が流れ着き、枯野 という名の船を造った。長年使ったため燃やして塩を作った。ところが 幾夜燃やしても芯が残ったため、天皇が琴を作りなさいと命じた。えも
言われぬ琴の音色を、二重のオノマトペで表現した琴の歌物語。)
①レクチャー・佐藤溯芳(和歌山大学国際観光学客員特別フェロー)
②龍笛奏者・久保順(世界的なフルート奏者、ジュリアード音楽院学士号、
 ニューヨーク大学大学院ディプロマ取得、国内外で最高賞多数受賞)
③尺八奏者・田中黎山(近畿大学卒業、第 10 回大阪国際音楽コンクール民俗楽 器部門第 1 位、第 7 回ノーヴィ国際音楽コンクール邦楽部門最高位)
④筝奏者・福本志穂(和歌山県出身。祖父、初代・田中黎山の尺八の音色と伝
 統楽器に興味を持ち六歳から琴を始める。生田流箏曲家・東美哉子に師事)
2、古事記・日本書紀歌謡の第一番歌は、「素戔嗚尊(スサノヲノミコト)」 の祝婚歌です。スサノオノミコトは知れば知るほど魅力ある男性神であるが、 天上界では悪さの限りを尽くし、高天原から出雲の地に追い出された。しかし、 地上界に降ろされたスサノオノは、島根県出雲の地で善良勇敢なヒ-ローに変 身して大活躍する。そこで、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治し、奇稲田姫 (くしなだひめ)を救い、姫を貰い受けて出雲の清地(すがち)に宮殿を建てた。 そして、「吾が心清清し」とて晴れやかに歌われた。
《 やぐもたつ いづもやへがき つまごみに やへがきつくる そのやへが きゑ 》 (八雲立つ 出雲 八重垣 妻籠に 八重垣 作る その 八重垣ゑ)

3、「冠位十二階」や「憲法十七条」を制定した、日本史上最高の知性と独創 性を兼ね備えた厩戸皇子(聖徳太子)は、一方では心優しい方でした。それを 証明するのが『日本書紀巻二十二』に記す「聖徳太子の歌」です。
西暦 613 年、聖徳太子が片岡山に遊行(布教のため巡り歩く)した時、飢え た旅人が道に臥(ふ)していた。姓名(せいめい)を問うても答えない。太子 はこれを見て飲み物と食物を与え、衣を脱いでその人を覆(おお)ってやり、「安 らかに寝ていなさい」と語りかけ、次のように歌ったのです。
《 しなてる 、片岡山(かたおかやま)に、飯(いひ)に飢(ゑ)て 、 臥(こ)やせる、その旅人(たびと)あはれ 。
 親無しに、汝(なれ)生(な)りけめや、さす竹の、君はや無き。
  飯(いひ)に飢(え)て、臥(こ)やせる、その旅人あはれ 》

5、曲名「枯野(からの)の琴」の由来。淡路島に香木の巨樹が流れ着き、 その香木で「枯野」という名の船を造り、宮中に聖水を運んだ。長年使ったた め燃やして塩を作った。幾夜燃やしても芯だけが残った。天皇は「余り樹で琴 を作りなさい」と命じた。琴を弾くと、えも言われぬ澄み切った音色であった。 その音色はあたかも、由良の海峡の海深く、岩礁に生えている海藻が波に揺れ るようである。琴の音は、さやさや、さやさや、さやさや、と爽やかにいつま でも鳴り響いていた。二重のオノマトペ(擬音語・擬態語)で表現した傑作歌。
からの しお や し あま こと つく か ひ
《 枯野を 塩に焼き 其が余り 琴に作り 掻き弾くや
ゆらととなかいくりふた き
由良の門の 門中の 海石に 振れ立つ なづの木の さやさや 》

佐藤 溯芳(さっぽう)

人間魚雷「回天」についての研究と日本書紀・古事記の歌謡を読み解く第一人者、佐藤溯芳(さっぽう)の経歴、活動についてご紹介致します。

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